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「リングの王様」といったら、やはり土星。この太陽系第6惑星は、肉眼でも星座の間に輝く姿を見ることができるが、望遠鏡で覗くと、大きく広がった輪(リング)を見ることができる。安い、小さな望遠鏡でも見ることが可能だが、双眼鏡ではかろうじて「コブ」のようなものが張り付いているのが確認できる程度。機会があればぜひ見ましょう!
現在、この土星を目指して飛行を続けている無人探査機がある。米国NASAと欧州宇宙機構ESA、並びにイタリア宇宙局の3機関が共同で開発した大型探査機「カッシーニ」で、1997年10月に打ち上げられた。これが約7年に及ぶ長い航海を終え、今年7月1日、土星へ到着する。写真は、2月下旬に撮影された、最新のもの。土星まで約7000� �キロ弱の地点を飛行中で、これまで得られたどの探査機の画像よりも鮮明だという。
探査機による土星探査は、1970年代まで遡る。米国の探査機・パイオニア10号、11号による近接撮影に続き、1980〜81年のボイジャー1号、2号による大クローズアップ写真は、宇宙に興味がある人も無い人も、見る人全てを圧倒した。地球からは見ることのできなかった小さな衛星(月)、新しい輪など多くの発見が相次ぎ、同時に、新たなる謎も残した。私にとって特に印象深かったのは、外側の細い2本のリングが"ねじれて"いる様だ。一体、そんな複雑な動きを制御しているものは、何なのか…?パイオニアやボイジャーは、土星の傍を通過しただけの、通りすがりの探査機だった。現在向かっているカッシーニは、土星の周囲を周回しながら長期に� ��って観測をする、言うなら"土星専用機"である。
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人類が文明を築き始めた太古の時代の話。夜になると都市にも明かりはなく、満天の星空が広がっていた。彼らは毎晩星空を見上げるうちに、形を変えない星座の中を、少しずつだが確実に動き回る星があることを認識し始めた。朝夕しか見られない「金星」「水星」や、真っ赤に輝く「火星」、さらに「木星」、「土星」も定められた。ただ、その動きは当時の理解力を超越していたため、彼らは惑星の動きを「占い」に利用した。今日の星占いも、歴史は遠く、古代メソポタミア時代の占星術に遡る。
しかし、土星の「輪」の発見は、望遠鏡が発明されてからだ。西暦1610年前後、時はルネサンス。当時を代表するイタリアの科学者ガリレオ・ガリレイは、自作の望遠鏡� ��惑星を積極的に観察した。土星を観察した彼は、「球体の両脇に大きなコブ」があることを認識した。当時のレンズの性能では、リングもコブに見えたというわけである。彼は何年も観察するうちに、コブの大きさが年々変化し、数年周期で消えることなども発見した。しかし彼は、それがリングであることは気づかなかった。
後に、オランダの天文学者クリスタン・ホイヘンスは、よりマシな望遠鏡を作成し、土星を観察。そしてそれが薄い、平らなリングを持つことを発見、土星が輪を持つことを認識した最初の人物となった。彼はまた、土星最大の衛星「タイタン」も発見している。ちなみに高校物理の波動の章で習う「ホイヘンスの原理」のホイヘンスも、彼である。
一方、イタリア人天文学者ジョバンニ・カッシーニ は、詳細な観測を続けるうちに、リングの間に"隙間"があることを発見した。上の写真で、リングの間に黒くて細い隙間があるのがわかるが、これを発見したのだ。この隙間は今日、「カッシーニのすきま」と呼ばれている。また、リングは微少な岩石やチリが集まったものからできている、と推察した。当時、「一枚の巨大な"板"である」という説もあり、真の決着がついたのはずっと後のことであったが、結果として彼の推察は正しかった。
探査機のその名「カッシーニ」は、勿論、彼にちなんで名付けられたものだ。なお余談だが、土星は密度が非常に小さい。図体の割には軽いと言うことで、水に浮いてしまうほど。これは惑星の中でも最小のものである。
カッシーニは、これまでに打ち上げられた多くの探査機の中でも� ��最大級の大きさに匹敵する。下写真はほぼ完成間近の姿であるが、高さが2階建ての家と同程度で、てっぺんのパラボラアンテナは直径4メートル、燃料まで含めた総重量は何と6トン!(正確には5650kg)ちなみにNASAは、「30人乗りスクールバスと同じサイズ」と表現している。ボイジャー探査機が約700sだったのと比べると、そのバカでかさがわかる。12のハイテク装置を搭載し、27の各種観測を行うことができる。システムを構成する配線は総延長12kmに達し、2万を超えるコネクターで1600に及ぶ電子基板を結んでいる。そしてこれらは、底部に搭載された3つの原子力電池で駆動する。太陽から遠いため、太陽電池は役に立たない。
ただ、カッシーニの、土星までの道のりは長かった。ボイジャーは打ち上げから約3年で土星まで到達した が、カッシーニは7年もかかった。それは、なぜか?
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探査機の打ち上げと、目標までの到達は、原理的には"砲丸投げ"と同じである。選手(ロケット)が目標へ向かって砲丸(探査機)を投げ飛ばす。砲丸は慣性で、(宇宙という)フィールドをヒュ〜っと飛んでいく。砲丸は、エンジンを吹かさない(吹かしたら反則だ)…これまでの探査機はどれも、これと同じやり方で送り込まれてきた。今年話題になっている火星探査機も、勿論例外ではない。しかし、重い砲丸は当然遠くへは飛ばないし、それじゃ選手の腕力(ロケットの推力)を強くすればイイかというと、それも限界がある(笑)。
重量6トンの物体を土星まで投げ飛ばすようなロケットを、未だ地球人は持っていない。
では、どうするか?…話は簡単。砲� ��投げから"ハンマー投げ"に競技を移せばいい。ハンマー投げとはあの、規定円の中でブルンブルン振り回して、絶叫と共に投げ飛ばすアレ。しかし、ハンマーならぬ探査機を、どのように"振り回す"か…これには、うまい方法がある。惑星の重力に"アシスト"してもらうのだ。
正確には「重力フライバイ」といい、本質もハンマー投げと厳密には違うのだが、同じようなものだと考えてもらえればいい。右の軌道図で"Launch 15 Oct 1997"が打ち上げ日時を意味し、一旦地球より内側の金星へ向かう(緑線)。金星に接近し、その重力で加速をつけたあと、赤線で示された軌道を辿り、再び金星に接近。その後、青線で示された軌道へ進み、1999年8月には地球の脇をかすめ、更に加速、同時にそれが、地球への最後の別れを告げる形となった。途中、2000年12月には木星の脇を通り過ぎ、木星の"シュート"を受け、"ゴール"となる土星を目指す!いつの間にか、例えがサッカーへ変わってしまった…まあそれはさておき、7年もかかるはずだ…。
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ところが。土星へ到達するのはいいが、今度は速度を落とさなければならない。剛速球も、勢いが強すぎてキャッチャーが受け取れなければ意味がない。そこで、逆噴射エンジンを点火し、減速することになる。カッシーニ� ��、アライブにおける一連の進行をスリリングなものに受け止めるのは、私だけだろうか。というのも実は、考えようによってはかなり危険な、賭に近い操舵が行われるのだ。
最初の写真をもう一度参照して頂くとわかりやすいが、現在、カッシーニは土星の下側から進入するコースを辿っている。写真には写っていないが、一番外側に細いリングがあり、それとメインリングの間の隙間を抜けて、上面へと向かう予定になっている。上の図はその時の様子を真上から表したもので、図中、カッシーニは上方から進入し、一番外の細いリングの内側を"すり抜ける"。かつて、ボイジャーがリングの脇を通過した際、小石が衝突してデータの一部が失われるというハプニングがあった。今回は、もっ� ��衝突の可能性が高い領域を通過する…なにせ隙間を抜けるのだ。頑丈に作ってはあるだろうが…(ここを通る際は姿勢を前後180度入れ替えて、大型パラボラアンテナを「盾」として進行する)。
リングの間を抜け、上方へ出た直後、逆噴射用のメーンエンジンに点火、減速を始める(図中、赤い曲線部分。右下イラストは想像図)。この燃焼は正確に97分間行われる…通常、地球の周囲を回っている宇宙船が帰還する際に行う逆噴射など、せいぜい10分位のオーダー。対してカッシーニは、「97分」という長時間の噴射を行うのだ。実は総重量6トンのうちその半分を、この時に備えた燃料が占める。もしこれがうまくいかなかったら…カッシーニは土星の脇を突っ走り抜け、太陽系の藻屑となるだろう。
ちなみにメーンエン� �ンは2基搭載されており、勿論、1基は予備。7年かけて此処まできて、「エンジン故障で失敗しました」では、悔やんでも悔やみきれない。それだけは、どうしても避けなければならない。
まるでスケートリンクを滑るかのようにすれすれを突っ走り、逆噴射を終える頃、カッシーニは土星本体への最接近を迎える。ミッション全体を通して、これほどまでにリング、更には本体へ接近するのは最初で最後。従って、写真撮影を始めとして、様々な科学観測も平行して行われる。
もし、この探査機に人間が乗っていたとしたら…彼、もしくは彼女は、誰も体験したことのない、壮大なヴィジョンを目の当たりにするに違いない。
この後、土星を周回する軌道に乗ったカッシーニは様々な観測ミッションをこなす日々を過ごすこ とになる。土星のリングや大気、磁気圏の詳細な観測に加え、大小様々の衛星の調査を行う。右写真は、衛星「ミマス」ボイジャーによって撮影されたその姿、アッと驚かされたのは、右上のデカいクレーター。直径300kmのミマスに対し、クレーターの直径は約100km。大きな小惑星が衝突し、ミマス自体、バラバラになるのを辛うじて免れたと考えられている。
その他にも興味深い衛星は多く、2機のボイジャーによって多くのデータが得られてはいるものの、一過性のものであり、長期に渡った観測はカッシーニの腕前にかかっている。しかも、今回の計画で最大の"ヤマ場"を、来年1月に迎える。それは、土星最大の衛星「タイタン」へ着陸機を降ろすことだ。
◇
タイタンは1655年、先に述べたホイヘンスによって発見された。 これは「衛星」でありながら地球の月はおろか、水星よりも大きい。しかも惑星の衛星で唯一、厚い大気を持っている。この大気はボイジャーによって発見されたが、全面がメタンの雲に覆われているため、地表を見ることはできない。正に、秘密のベールに包まれている。
大気の95%が窒素であり、分厚いメタンの雲が漂う。しかも、表面には液化メタンの「海」があると考えられているが、本当のところは誰にもわからない。ただ、原始地球とよく似た化学組成であると言われており、そのような観点からも、直接探査に大きな期待が込められている。
着陸機は「ホイヘンス」と名付けられているが、これは勿論、タイタンを発見した彼にちなんだもの。重さ約320kgの円盤状の着陸機で、カッシーニの横腹に取り付けられてお� ��、土星まで同行する(上写真・カッシーニの左脇腹の"ベーゴマ"のような物体)。今年12月、突入の22日前にカッシーニから切り離され、その後、"小冬眠"に入る。1月に入り、タイタンを目前にして目を覚まし、活動開始。データを地球に送信しながら、大気圏へ突入する速度はマッハ20!直後、耐熱シールドは1800℃まで上昇する。
速度がだいぶ落ち着いた頃、パラシュートを展開。ゆっくりと降下を続けること約2時間、最後はスカイダイバーが着地するのと同じ位の速度で着地する。勿論その間、写真の撮影や観測データの送信を続ける。
ホイヘンスは、固体の上でも、液体の上でも、どちらにも着陸できるように作られている。何せ、陸の上か、海の上か、どちらに降りるのかわからない…「水陸両用」というわけだ。ドス� �と落ちるか、ザブンといくか…いっそ「海岸」付近に着地するのが面白いと思うのだが。陸の様子も、海の様子も同時に満喫できる。しかも液化メタンの海。水とは違った波打ち際は、不思議な光景となるのは間違いない。(イラスト:降下するホイヘンスの想像図)
カッシーニの到着が待ち遠しい
【以下、カッシーニに関する追加情報です。下に行くほど古くなります】
★2007年以降、現在までの追加情報は→こちらへ
★追加情報 (12.30. 2006)
☆NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星やその衛星の最新映像がこちらにリリースされています。以下、その素晴らしい映像の一部を…
下は2006年7月31日に撮影された土星。CGのように見えますが、赤・緑・青フィルター画像を合成して作られたナチュラルカラーとのこと。
下は衛星「タイタン」で、その分厚い大気の縁の向こう側に写っているのは、土星の南極点付近。2005年12月26日、タイタンから約26000kmの地点で撮影された。
下は、これまでの観測で得られたデータを基にして作られたタイタンの地図(大きいサイズ)。ぼんやりとしている部分は今年2月から数年かけて行われるフライバイで詳細に観測が行� ��れる予定。
下は、リングと衛星「エンケラドス」。エンケラドスの南極域(下部)からの噴出もよく見えている。2006年3月22日撮影。
リングとその下方に写るのは、衛星「エンケラドス」と「レア」。三日月の両衛星のうち、手前はエンケラドスで、向こう側がレア。2006年3月2日撮影。20分間に撮影された40枚の静止画を組み合わせて作られた動画はこちら
…なんとも神秘的な映像ばかりですね!
★追加情報 (12.22. 2006)
☆下は、土星周回探査機「カッシーニ」によって得られた衛星「エンケラドス」の熱分布画像。同衛星の南極域に存在する「タイガーストリップ」と呼ばれる地溝帯からは大規模な氷やダストの噴出が発見されている。
噴出は2005年7月14日、同衛星へのフライバイの際に発見された。だがそれ以降、今年11月まで、同衛星を観測する上で好条件の位置関係にならなかった。
(下・2005年のフライバイの際に撮影された南極域。引っ掻き傷のような地溝帯が数本並行に走っている。カッシーニはほぼ真上・高度480kmを通過し、まさにスプレー噴射の直撃を食らったといえる。実際、ダストセンサーはパウダー状の、大量の微粒子を検出した。)
観測で� �極域の温度が周辺よりもかなり高いことがわかる。しかも各地溝ごとに区別できる活動ではなく、極域全体で活発であることもわかる。さらに、間欠泉のように断続的なものではなく、ほぼ連続した活動であることも示唆している。
平均的な最高温度は85ケルビン(−188℃)であるが、細かい分析により、タイガーストリップに沿った極狭い、数百メートルの領域に渡って130ケルビン(−143℃)に達している部分も確認されている。詳しくはこちらへ【Cassini 12.22】
★追加情報 (12.18, 2006)
☆土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した10万枚を超える映像の中からベストを選ぶ第2回カッシーニ・フォトコンテストが、ジェット推進研究所(JPL)のサイト上で行われている。15枚がノミネートされており、だれでも投票することができる(こちら)。最終結果は2月上旬に発表される予定。
ちなみに、昨年行われた第1回の結果はこちら【Cassini 12.18】
☆下は、土星周回探査機「カッシーニ」が北極上空を飛行中に撮影した画像。ダイナミックな画像が息を飲みますね^^
「180度トランスファ」と呼ばれる、軌道長径を180度振り回すマニューバの過程で赤道面から高く飛び上がる(こちら)ために可能なアングルです。詳しくはこちらへ【Cassini 12.18】
☆土星の衛星「エンケラドス」の南極域における大規模噴出について、メカニズムに新説が提唱された。
昨年、カッシーニがこの大発見をなした直後、この噴出メカニズムについて、氷で覆われた地表の地下に液体の水だまりがあり、それが大噴出を起こしているというモデルが提唱された。これはイエローストーン国立公園の間欠泉「Old Faithful」の仕組みにちなんで「Cold Faithful」と呼ばれている。
「ところがこのモデルには難点があります」と語るのは、今回新説を提唱したイリノイ大学のスーザン・キーファー教授。同教授は惑星科学、特に地球や木星の衛星「イオ」、天王星の衛星「トリトン」における噴火や噴出を研究している。
エンケラドスの噴出物には、二酸化炭素、窒素、メタンを含み、これらは併せて1割に達する。だが、窒素やメタンはエンケラドス内の圧力下に於ける液体の水には、それほど溶解しないのだ。「Cold Faithful モデル」の大きな難点の1つである。
そこでキーファー教授らが提唱するのが、「クラスレート」(包接体)と呼ばれる状態だ。クラスレートとは、ある物質が分子レベルの空間を形成し、その中に別の物質が"入っている"状態。この場合、固体の水分子たちが空間を形成し、そのすき間に前述の気体が閉じこめられている状態だ。
クラスレートが真空中に放出されたとき、中に入っている窒素やメタンのガスがバースト、氷ともども拡散しているのではないかという。このクラスレート理論は、−100℃程度のエンケラドスの地下環境にもフィットするという。詳しくはこちらへ【University of Illinois 12.14】
★追加情報 (12.12, 2006)
☆土星の衛星「タイタン」で、これまでに見つかった中では最も高い山が発見された。土星周回探査機「カッシーニ」による、10月25日のフライバイで明らかになった。
「シェラネバダ山脈を彷彿とさせるような類の巨大山脈があります。長さはざっと100マイルはありますね」と語るのは、アリゾナ大学のボブ・ブラウン博士。
10月25日のフライバイでは、これまでにない高解像度の赤外線画像を得ることができ、解像度は400mであった。このデータと、既に得られているレーダー観測のデータを合わせて分析することで、新たな地質学的発見を引き出すことができるのではないかと研究チームは期待している。
山脈は長さ150km、幅30km、高さ1.� �km。表面にはメタンの"雪"もしくはその他の有機化合物が堆積していると見られている。上の画像は、既にこの地域に関して得られているレーダー画像に、赤外線データを組み合わせたもの。赤外線波長は1.3ミクロンを青、2ミクロンを緑、5ミクロンを赤で着色して表現されている。
一方、下の画像では、刻みが入った地形が浮き彫りになっている。この地形は恐らく地殻活動による力で生じたものであろうと考えられている。
また、右画像の下方には一筋の明るく輝く雲が写っている。これはメタンが凝縮することで生じたものであろうとみられている。このような雲は噴火によって形成されるのではないかと考えられたことがあったが、しかし、この画像を見るとその説には疑問を抱かざるを得ない 。
その他、詳細や大きい画像はこちらへ。【Cassini 12.12】
★追加情報 (12.07, 2006)
☆「老スポークは死なず、ただ消え去るのみ…」 土星のリングの研究者たちは近年、そう考えているようだ。
「スポーク」とは、土星のリング上に出現するくさび状や放射状をした模様のことで、ボイジャーによって発見されたもの(右・ボイジャー2号が撮影したスポーク)。スポークは殆ど形を変えずにリングの上を移動しているが、不明な点が多い。ただ、土星の磁場が関わっていそうなこと、リング面が大きく開いているときには見えにくいということはわかっている。成因と正体は、リング面に衝突した微小隕石が巻き上げたチリと考えられている。
現在、土星を周回しながら観測を続けている探査機「カッシーニ」は、2004年夏の周回軌道投入からしばらくの間はリング面との� ��相角が大きかったためスポークに巡り会わず、軌道を変更し位相角が小さくなった05年9月、初めてカッシーニもそれを捉えることに成功した。
下は、カッシーニが今年11月1日に撮影したBリングの拡大映像で、2枚をつなぎ合わせて作成されている。左側の方に、リング模様を横切るように伸びるスポークが見えている。
太い2本が見えるが、上のものは長さ2500km、幅600km。下のものとの間隔は約8500kmに達する。この画像は、「スポークはまず放射状に出現し、周回するうちに幅を広げ分散、約3時間20分後にフェードアウトしてしまう」という説を支持している。「突然消えてしまう」(die)のではなく、「消えゆく」(fade away)のだ。
一番下の太いスポークはその広がり具合から、形成されて2時間15分ほどが経過したものと推測される。あと1時間もすれば消滅してしまう、「消えゆく」スポークである。
この画像は、リング面から32度の角度で撮影されたものである。詳しくはこちらへ【Cassini 12.07】
★追加情報 (12.05, 2006)
☆画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が今年10月31日撮影した衛星「エンケラドス」の姿。
直径500kmのこの衛星の南極域からは氷の結晶などが噴出しており、研究者たちの注目を集めている。画像でもその様子がよくわかる。(右は管理人による二階調画像。かなり遠方(衛星の直径以上?)まで噴出が出ているようですね)。大きい画像などはこちら【Cassini 12.05】
★追加情報 (12.01, 2006)
☆下は、土星周回探査機「カッシーニ」が、土星の北半球を見下ろした姿。10月30日に撮影された。画像の上半分には、リングの裏側が微かに写しだされている。
太陽ー土星−探査機のアングルは150度、リング面から44度。大きいサイズはこちら【Cassini 12.01】
…リングの裏側って、光が殆ど浸みて来ないんですね〜。
★追加情報 (11.16, 2006)
☆画像・左下は土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星のFリングと衛星プロメテウス。プロメテウスはFリングのすぐ内側を運行する衛星で、差し渡し102kmの小さな衛星。だが小さいながらFリングに与える影響は大きく、特に接近した際にはその重力でリング粒子を引っ張り、画像で見るような乱れを生じさせる。右の画像は広範囲にわたる様子(大きいサイズ)。
2009年にはプロメテウスの軌道がFリングを横切ることがわかっており、そのとき何が起こるのか、輪の研究者たちは非常に心待ちにしているという。詳しくはこちらへ【Cassini 11.16】
☆左はNASAの土星周回探査機「カッシーニ」が今年10月11日に撮影した土星の南極点に巻く巨大な渦。垂直構造がはっきりと浮かび上がっており、このような様が捉えられたのは初めてのこと。渦の高さは30〜70kmに達しており、地球で見られる台風やハリケーンとは全く異なる特徴を備える。
一方、右は欧州宇宙機構(ESA)の金星周回探査機「ビーナス・エクスプレス」が今年4月12日に撮影した、金星の南極点。左は可視光、右は赤外波長で捉えたもので、やはり大規模な渦を描いているのがよくわかる。
土星は水素・超低温、金星は二酸化炭素・超高温…大気の属性も全く異なる両者。その渦のメカニズム解明はこれからである。【photo:NASA/ESA】
★追 加情報 (11.09, 2006)
☆下は土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星のBリングとAリングの一部。天然色だそうです…きれいですね〜^^(大きいサイズ)【NASA 11.09】
★追加情報 (11.08, 2006)
☆土星を周回しながら精力的に観測を続けているNASAの土星周回探査機「カッシーニ」は、その予定されている観測期間のほぼ半分を消化した。現在、予定観測が終了した後のカッシーニの扱いについて、議論が始まりつつあるという。計画では、2008年7月に当初予定を終了することになっている。
「現在、ミッションを2010年7月1日まで延長する案が出ています」と語るのは、カッシーニ計画マネジャーのロバート・ミッチェル氏。「探査機が充分に機能するのであれば、更なる延長もあり得るでしょう。」
カッシーニは、2012年頃にミッション終了の時期を迎えることになると考えられている。(姿勢制御燃料が底を尽きるのがその辺なんでしょうね@管理人)
「最 もあり得そうな選択肢としては、カッシーニを、何にも衝突を起こしそうにない軌道に投入することでしょう」と、ミッチェル氏は言う。「あるいは、木星探査機ガリレオの最後ように、惑星本体に突入させるということもあり得ます」と、土星本体への突入も挙げている。ただし、土星本体に探査機を突入させることは、その手前で輪に衝突するというリスクもある。
別の選択肢として、衛星に衝突させるということも考えられる。だが、搭載されている原子力電池の放出する熱により氷を溶かしてしまうなど、衛星の環境を破壊してしまうというハイリスクがある。
さらに別の肢として、土星周回軌道を離脱させることも考えられる。離脱後は太陽系外へのコースを辿らせ、例えばカイパーベルトの観測に向かわせるという� �もあり得るし、一方、太陽系内側に帰ってこさせ、木星や、あるいは太陽に命中させるという手もあり得る。中には、水星に激突させ、その表面に変化を与え、組成を調べるという案もある。タイミングが良ければ、2021年に予定されている水星探査計画「ベッピ・コロンボ」にぶつけることも可能かも知れない。ただ、土星の重力圏離脱には、衛星「タイタン」への度重なるフライバイが必要とされている。
いずれにせよ、カッシーニをその後どうするかは、現行ミッションの終了が近くなった頃に結論がでるという。詳しくはこちらへ【CNN.com 11.08】
★追加情報 (10.27, 2006)
☆下の画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、土星本体の影からリングが出現する部分。リングが闇から現れる部分、カミソリで切ったような影の一直線はなく、ぼんやりボカシが入った姿になっている。
これは、土星本体で反射された太陽光がうっすらと照らしているため。大きいサイズはこちらへ【Cassini 10.27】
★追加情報 (10.18, 2006)
☆下は、土星周回探査機「カッシーニ」が先月25日、ナローアングルカメラで撮影した「Fリング」の拡大映像。
Fリングは複雑なねじれやこぶがボイジャーにより発見されて以来、興味深い対象のひとつ。今回得られた画像はかつて無い解像度で撮影されたもので、複雑な形状が"ムーンレット"(微衛星)の存在によることを示唆する証拠も掴んでいるという。
微衛星とは、差し渡しが数百メートル程度のごく小さい塊で、土星のメインリングの中にも無数に散らばっていることが最近明らかになっている。このムーンレットがFリングの中にも存在し、その重力の影響でリング物質が巻き上げられたりしていると考えられる。
ちなみにFリングは、その内側に存在する� �星「プロメテウス」からも重力的な影響を受け、リング物質が乱されていることが知られている(詳細こちら)。大きい画像や詳細はこちらへ【Cassini 10.18】
★追加情報 (10.12, 2006)
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